2021.10.18  【責任編集】ラーニング・ツリーリモートワークにおけるマネジメントの課題

2020年4月に発令された緊急事態宣言を契機に「リモートワーク化」は急速に進みました。もともと働き方改革の一環で注目されてはいたものの、いまひとつ踏み込めない企業は多かったでしょう。

しかしコロナ禍がその様相を激変させ、今ではリモートワークが「有用な働き方」の選択肢の一つになっています。

今回はそんなリモートワークの課題についてお話します。これからリモートワークを導入する企業、リモートワークが上手くいかない企業はマネジメントとコミュニケーションについて再度考える機会にしていただければと思います。

定着しつつあるリモートワーク

初めて緊急事態宣言が発令された2020年4月以前と比較すると、リモートワークは確実に定着しつつあります。東京都が定期的に発表している調査結果によれば、2020年3月は24.0%だった実施率が2021年8月には65.0%まで上昇しています。

>>テレワーク実施率

出典:「テレワーク実施率調査結果をお知らせします!8月の調査結果」東京都産業労働局

緊急事態宣言の有無によって若干の増減はありますが継続して50%以上をキープしているところを見ると、コロナ禍に関係なくリモートワークが定着しつつあると言えるでしょう。

リモートワークのメリット

それでは、リモートワークのメリットを改めて整理してみます。

1. 通勤費用やオフィス賃料の削減

オフィス賃料まで削減できずとも従業員の通勤費用を削減できている企業は多いでしょう。その分を従業員に還元し、快適にリモートワークが実施できるようサポートしているケースも散見されます。

2. パフォーマンス向上に期待できる

片道60分の通勤時間を削減できれば、1日で2時間の余剰が生まれます。従業員はその時間をフル活用でき、ライフワークバランスを整えられるため仕事のパフォーマンス向上が期待できます。

3. 企業のイメージアップにつながる

「リモートワークを実施している」というだけで企業のイメージアップにつながるのは確かです。多様な働き方を提案することは、今後の採用活動においてスタンダードとなっていくでしょう。

4. 離職率低下の要因になる可能性

育児や介護で忙しい従業員にとってリモートワークは助け舟になります。キャリアを中断せずに働けるため、結果として企業の離職率低下につながる可能性があります。

5. 優秀な人材を確保できる可能性

上記のメリットから、採用活動において優秀な人材を確保できる可能性も出てきます。フルリモート環境を整えれば全国津々浦々、あるいは海外人材を確保することもできるでしょう。

細かいメリットを挙げれば他にもありますが、以上がリモートワークを実施する大まかなメリットになります。これらのメリットを確実に享受できれば、リモートワーク導入の意義を感じられるはずです。

リモートワークの課題

リモートワークには素晴らしいメリットがあるものの、それらを享受するには課題も多く残されています。

1. コミュニケーションが上手くいかない

オフィス勤務でもなかなか解決が難しいコミュニケーション課題は、リモートワークで一層強く感じることになります。コミュニケーションの回数・時間は格段に減るため、従来よりも仕事がスムーズに進まないケースが多々あります。

2. 労務管理が難しく長時間労働に陥りやすい

労働基準法の改正により「労働時間の客観的な把握」が義務化されたものの、リモートワークでは労務管理が難しく長時間労働に陥る可能性があります。仕事に対するプレッシャーから残業を報告しない従業員が出てくることも想定しなければいけません。

3. 従業員の精神的負担が大きくなる恐れがある

リモートワークを実施している従業員は、そうでない従業員に比べて精神的負担が大きくなるというデータがあります。「目に見える成果を出さねば」というプレッシャーは想像以上に重くのしかかるようです。

4. パフォーマンスが逆に低下してしまう

上記3つの課題から「仕事のパフォーマンスが逆に低下してしまう」という課題が生まれる可能性も。本来はパフォーマンス向上を目指しているだけに、この課題をクリアしない限りリモートワーク導入の意義が失われてしまいます。

5. 適正な人事評価が難しく不満が出やすい

マネージャークラスにとって「仕事の過程が見えない」のは人事評価が難しくなる要因であり、それによる従業員の不満も出やすくなります。不満が募れば離職率上昇などリモートワークが逆効果になることも考えられます。

リモートワークを実施するのであれば、いずれの課題ともしっかり向き合うことが大切です。「導入すれば自然と上手く回る」と考えるのは禁物。昨今のビジネスパーソンがITツールを使いこなせているからといって、リモートワークが上手く回るとは限りません。

リモートワークにおけるマネジメントの課題と重要性

リモートワーク導入を成功させ、多くのメリットを享受するにはどうすればいいのか?まず取り組むべきは「マネジメントの課題と重要性を理解すること」です。

上記に挙げたリモートワークの課題は、いずれもマネジメントに問題があることで起こります。これからリモートワークを導入する企業、リモートワークが上手くいっていない企業は以下のマネジメントを実施できているかをまず考えてみてください。

  • 適切なコミュニケーションツールを活用できているか?
  • オンラインによるコミュニケーションを習慣化できているか?
  • 定期的なミーティングを実施してチームの結束力を高めているか?
  • 組織、チームの全体目標と個人目標はしっかりと整合性が取れているか?
  • タスクフォースを意識して部門の垣根を越えた取り組みを実施しているか?
  • 従業員がセルフマネジメントを徹底できる環境や教育は用意されているか?
  • リモートワーク導入にあたり従業員の評価制度を継続的に見直しているか?
  • プロジェクト管理ツールを活用した合理的なタスク管理が実施されているか?
  • 従業員同士が直接会う機会を設けて対面コミュニケーションを実施しているか?


いかがでしょうか?現状としてリモートワークが上手くいっていない企業は、上記のマネジメントを実施していない、あるいは問題が生じているものと考えられます。

これらの課題を解決するにはマネジメントの重要性、それによりコミュニケーションの変化への深い理解が必要です。つまり、組織やマネージャーのマネジメントスキルを磨くことがリモートワーク成功に繋がることになります。

まとめ

リモートワークの定着によりマネジメント課題が浮き彫りになったことは、マイナスではなくむしろ「プラスの出来事」と捉えるべきです。課題解決によりリモートワークのメリット教授だけでなく、オフィス勤務でのマネジメントの質向上も期待できるからです。

そのためには、マネジメントする側とされる側の意識を共有し、試行錯誤を繰り返す期間が必要になります。そうした意味でリモートワークはマネジメントを再考するための良い機会になるでしょう。

是非とも、自社のリモートワークの現状とマネジメントの課題について目を向けてみてください。

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