2022.07.21 【責任編集】ラーニング・ツリーラーニング・ツリー ベテラン講師が語るシリーズ(2)“組織を動かすもの”
実務家講師が伝えたい、受講生へのヒント
ラーニング・ツリーで長年プロジェクト・マネージメントやビジネスアナリシスの講義を提供してこられた講師が、受講生に伝えておきたいヒントをご自身の経験をもとに書いてくれました。
第二回目の内容は “組織を動かすもの” です。
プロジェクトを計画したり、実行したりするときに周りがこちらの考えをなかなか理解してくれないなあと感じることが何度もあると思います。プロジェクトへの要求と実行計画とのギャップはその最大のものかもしれません。フォローアップ研修(**1)では、プロジェクでは「無理なプロジェクトを実施した、やらされた」といった話も出てきました。プロジェクトを計画する立場からすれば、与件に沿っての実行はむつかしいとの見積もり資料を示しているのだからわかってくれるはず、あるいは代替案を示しているのだから理解してくれるはずとの思いがあります。資料を論理的に正しく作れば、あるいは間違いなければ、わかるはず、理解するはずと思えます。しかし、なかなかうまくいかないことがありますよね。
何が足りないのでしょう?
私自身もこうした経験があります。見積りした金額の6割で提案したいと上層部からいわれたことがあります。いろいろ抵抗はしたけれど・・・でした。しかし、プロジェクト終了してしばらくたって振り返った時に、本当にこちらの案を通そうとしたのかなあと感じるようになりました。上層部の案では絶対にダメなんだから、チームの案を必ず通すんだ、だったらどう動く?といったことをどこまで考えて実行したのかと自問すれば、寂しいものだったと思います。最初から「どうせ言っても動いてもダメ、こちらの案は通らない」そんなあきらめを持ちながらだったのではないかと思います。だからこちらの思いが相手に届かなかったのではないか、そんな気がします。
逆のケースもありました。立案したプロジェクト計画を担当営業も本部長クラスも「ノー」と言い、お客様に提案できる案に変更しろと言われたことがありました。この時はプロジェクトで再度の失敗をすることはできないとも思いがありましたので、何としてもチームの案を守る、通らないのなら担当予定を外されてもいいと思いながら動きました。いくらかの変更要求を入れながら対応しましたが、譲れない線は守りました。結果、チームの案を理解する上層部が出てきてうまくいきました。もちろん、このように単純な話ではなく、いろいろな要因も絡んでの結果でしたが、しかし、案は承認されました。これには後日談があります。プロジェクト成功後しばらくたってから,担当営業が「あの時いただいた計画案のほうが良いとは思いましたが自分の立場ではそうは言えませんでした」と言ってきました。
このような事例ばかりではなくものの本を読んでも、「こちらの案、考えを周りに分かってもらう、理解してもらうのは、単に論理的に正しいか否かが問われているわけではない。物事を成し遂げようとする熱意、行動が相手に伝わるか否かが大きく関係する」といわれます。
同様のことが「政治を理解せよ」との表現で言われてもいます。「政治」と言っているのは組織やその構成員が何を重視し、どのように動くかを理解すると言い換えてもいいかもしれません。どうすれば互いに納得できるのか、ですね。
プロジェクトを進める時には関係者の思いや要求を整理し、限られた資源の中で何かを取り上げ、何かを捨てて目標に向かい最良の道を形成していくように関係者を結束させていく、そのような力が政治的能力と言われます。
組織を動かすには、単に論理的な資料だけではなくこちらの思い、熱意も見えるようにすること、相手の立場や思い、感情などにも心配りができるような政治的な能力が必要といった点も理解をしておくことが大切です。こうした点に思いをいたすことができるPMであれば、周りは貴方を理解し良い協力者になってくれると思います。組織を動かすことができるようになると思います。
(**1) フォローアップ研修:ラーニング・ツリー・インターナショナル社では、プロジェクトマネジメント研修を受講した後に、受講生がどのようにプロジェクトをマネジメントできたのか、どんな問題が確認できたのかを実際のプロジェクトでの経験をもとにフォローアップ研修として実施しています。
実務家で長年講師をしてきた経験が語るヒント:プロジェクトマネジャーがぶつかる課題:組織をどう動かすのか
PM(プロジェクトマネジャー)が経験すると必ずぶつかる組織の問題。経験豊富な実務家だから伝えたい講義のテキストには書いていない内容がつづられました。
プロジェクトマネジャーは講義だけではなかなか身につきません。講師の経験や、仲間の意見を共有しながら実施していくことでより優秀なPMになっていけるのだと思います。
この記事を読んだ方へお勧めの講座
【公開講座・オンラインライブ研修】プロジェクトマネジメント:成功のための技能│ラーニング・ツリー・インターナショナル (learningtree.co.jp)
【公開講座・オンラインライブ研修】プロジェクトマネジメント:アジャイルとウォーターフォール│ラーニング・ツリー・インターナショナル (learningtree.co.jp)
尚、公開講座ではフォローアップ研修を提供しておりません。一社研修を前提にした個別プログラムになりますので、興味のある方はお問い合わせフォームよりご連絡下さい。