2021.09.24 【責任編集】ラーニング・ツリーアジャイルチームのためのファシリテーション研修
今回のテーマは「アジャイルチームにファシリテーション研修は必要か?」です。結論から言って、ファシリテーション研修は必要になります。
ファシリテーションという言葉自体は耳にしたことがある、という方が多いでしょう。しかしながらその意味や本質、アジャイルチームにおける重要性まで理解できている方は少ないように感じます。
そこで、ファシリテーションの基本的な意味からネゴシエーターとの違い、アジャイルにおけるファシリテーションについて解説していきます。「ファシリテーションって重要だと聞くけれどなぜ重要なの?そもそもファシリテーションってなに?」という方は、ぜひ参考にしてください。
近年ファシリテーションに注目が集まっている
今日、アジャイルに限らず様々なシーンでファシリテーションに注目が集まっています。ちなみに日本ファシリテーション協会によると、ファシリテーションは次のように説明されています。
人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。 集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。
出典:「ファシリテーションとは?」日本ファシリテーション協会
一言で表現するなら「縁の下の力持ち」といったところでしょうか。近年では日本でも海外でも「無駄な会議の効率化」が促進されており、その実現に向けてファシリテーションスキルが注目されています。単なる会議の進行役ではなく、「ファシリテーター(ファシリテーションを実行する人)」という立ち位置で議論やアイデア創造の活発化を支援する役割を担っているのです。
ファシリテーターとネゴシエーターはココが違う
「ファシリテーターって、ネゴシエーターと同じ役割?」と疑問が生じている方もいらっしゃるでしょう。両者の違いを明確にしておきます。
「ネゴシエーター(ネゴシエーションを実行する人)」はわかりやすい日本語に変換すると「交渉人」です。具体的に言えば、自身(自社)と相手の、利害を合意形成するために傾聴・説得する役割を意味します。M&A(合併・買収)などにおいて、M&A先と諸条件について交渉する人はネゴシエーターと呼べます。
一方、「ファシリエーター」は会議における進行役であり、さらにその進行が人々の活動を湯に出来るよう支援し、集団による問題解決、アイデア想像、あらゆる知識創造活動を支援、促進していく働きを持つことが出来るようにしないといけません。
ファシリテーターに求められるもの、アジャイル開発においてのファシリテーションとは
ファシリテーターに求められるスキル
日本ファシリテーション協会では以下4つのスキルを求められるものとして挙げています。
- 場のデザインのスキル:場を作りメンバーを参加させるスキル
- 対人関係のスキル:関係を “受け止め” “引き出す” ことから作り出すスキル
- 構造化のスキル:ポイントを整理するスキル
- 合意形成のスキル:意見をまとめ、参加者が納得理解できるようにするスキル
アジャイル開発においてはどのように必要になってくるでしょうか
わかりやすくスクラムを例に挙げていきましょう。世界的に最も多く取り組まれているこのアジャイル開発スタイルは、プロダクトオーナー、開発チーム、スクラムマスターという3つのロール(役割)と彼らを取り囲むステークホルダーによって成り立っています。
スクラムではプロジェクトのゴールに向けて全体が機能的に動かなければならないのですが、各ロールがそれぞれの役割を果たそうとする際に不整合が生まれることが多々あります。
この時、スクラムチーム全体の潤滑油として機能するのが「ファシリテーション」というテクニックであり、ファシリテーションを実行する人「ファシリテーター」が重要になってきます。
具体的には、以下のような点を意図してファシリテーターは役割を果たすことが求められます。
- メンバーの役割を教え、それを逸脱させない
- ミーティングの目的や成果物を明確にする
- 心理的安全性が保たれたポジティブな環境づくり
- ミーティングでは円滑な進行をサポートする
- 議論においては常に中立の立場にある
- メンバー全員の発言権を認め、積極的に発言させる
- 発言内容の可視化により意思疎通を促進する
- チームでの問題解決プロセスをリードする
- 意思決定事項のコミットメントを管理する
- ミーティングやスプリントの進捗管理を行う
アジャイルの価値を高めるファシリテーション
ファシリテーションを取り入れる最大のメリットはやはり「アジャイル開発の価値を高め、円滑に、かつ高品質な成果を出す」です。
既に、アジャイル開発は様々な会社で導入が進んでおり、これからも、多くの企業で導入が進んでいくことと思います。しかし、“導入する” ことだけを目的にしていては、すぐに問題にぶつかってしまう要素が高くなります。
アジャイル開発を正しく理解し進めていくにあたって、ファシリテーターに相当する業務は “スクラムであれば、スクラムマスター” “XPであれば、プロジェクトリーダー” の方が担う場合が多いかもしれません。こういった方々はこれまで個人の能力でアジャイル開発を進めてこられた方が多いかもしれません。
しかし、“ファシリテーション” の意味をアジャイルの価値を再確認しながら理解を進める事で、問題発生の可能を減らし、更に円滑にアジャイル開発を進められることになると思います。
- アジャイルにおける “場” となる各イベントでは何に注意を払いながら作っていくのか。
- アジャイルにおける “対人関係” では例えばスクラムマスターやプロジェクトリーダーは指示を出す人ではありません。では、どのようにしてチームメンバーに行動を促すのか。
- ”構造化“ はプランニングやプロセス管理に役立つ能力になります。
- ”合意形成“ 非常に大きなポイントですが、プロジェクトを進めるにあたり、一番能力が必要になるものかもしれません。
まとめ
ファシリテーターという存在の重要性はアジャイルに限った話ではありません。例えばウォーターフォールだとしても、スキルの高いファシリテーターが立ち回れば素晴らしいプロジェクトに仕上がります。
しかし、ファシリテーターの役割を正しく理解し、正しく生かしていかなければプロジェクト全体の品質はよくなりません。この機会にファシリテーション並びにファシリテーターの重要性を見つめ、再度アジャイルチームにおいてアジャイルの価値を高める活動につなげて頂きたいと思います。
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