2022.01.11 【責任編集】ラーニング・ツリーPMBOK 第7版はどう変わったのか?
プロジェクトマジネジメントに関わっている人なら、PMBOK第7版が新しく出されたことを知っている人は多いと思います。また、その内容が大きく変わった事でびっくりされている方も多いかと思います。
PMBOKとは
PMBOKとは「Project Management Body of Knowledge」の頭文字をとったもので、「ピンボック」と呼ばれます。米国のPMI(プロジェクトマネジメント協会)がPMBOKのいわばプロジェクトマネジメントの知識体系をいわれるガイドブックを刊行しています。
PMBOKそのものは体系をさしていますが、発行されるガイドブックを指して言われている事もあります。
PMPの資格保有数と改訂の影響
さらに、この協会が運営している資格試験がPMP(Project Management Professional)であり、日本ではプロジェクトマネジャの資格としては大きな意味を持ちます。
PMPは合格率などのデータが公表されていないため、年次レポートで紹介されているPMP資格保有者数をグラフにまとめました。
2013年から2015年にかけて資格保有者数が減少傾向にありましたが、2016年以降は増加に転じています。
PMPの資格試験
現在のPMP資格は2017年に刊行されたPMBOK第6版をベースにしており、資格を取得するために凡そ750ページもある第6版をベースに受験勉強をしておられた方も多いのではないかと思います。
それが、第7版が刊行され、200ページ強となったことであまりの大きな変化にびっくりされた方も多いのではないかと思います。
日本のPMI協会では、第7版が刊行された2021年11月の段階で第6版をベースにしていれば今は問題ないとしていますが、大きく変わった第7版での試験にいつから変更になるのかは明確になっていません。
PMPの第7版とは?
資格を取るつもりがない人でも、プロジェクトマネジャとして仕事をされている方は、第7版がどのように変更になったのかについて大きな関心を寄せている方が多くおられます。
今後のプロジェクトマネジャとしての仕事にどのような影響があるのかにかかわってくるからです。
変更内容を聞くと、これまでプロジェクトマネジメントのガイドラインとしては大きく変わったことに驚くかもしれません。
下記いくつか変更されたトピックを記載しましょう。
- 「5つのプロセス」は記載が無くなった。
- 「10の知識エリア」も記載が無くなった。
- 「価値提供システム」・「12の原則」・「8のパフォーマンスドメイン」という概念が紹介された。
これらの変更はプロセスをきちんと守っていれば、プロジェクトは成功するとしていた内容に、それだけではプロジェクトが成功しない場面が出てきていることを示しています。
プロセスを実行する為の知識からパフォーマンスドメインという分類の行動様式に変わった事は、場面毎にどのような行動をとるのか、その臨機応変な変更の指針を示していると言えます。
なぜ第7版で大きな変更がなされたのか?
このような改訂は、今日のプロジェクトに求められるものが変わってきている事を受けている事に相違ありませんが、では、求められるものがどのように変わってきたのでしょう?
そして、PMBOKがとりいれようとしているものは何なのでしょうか?
その主要な答えは、第7版ではアジャイル開発の手法やマネジメントを取り入れたことで判る部分があります。
従来のウオーターフォールに代表される構造型の手法では、ビジネスに適合できないプロジェクト・市場の要求・変化のスピード・不確実性の中でビジネスを継続させる事への限界が見えてきたという事です。
第7版で取り入れたアジャイル手法・ウオーターフォール手法は無くなるのか?
第7版での変更にアジャイル手法が取り入れられたと言っても、勿論、ウオーターフォール手法が無くなった訳ではありません。
第7版で示しているのは、プロセスを規定することでは無く、プロジェクトに応じた臨機応変な対応をするべきであり、その原則を示すというガイドラインです。
これまでも、ウオーターフォール型とアジャイル型を組み合わせて1つのプロジェクトで利用していく方法(例えば、ウオーター・スクラム・フォールと呼ばれたモデル)などへの挑戦がありましたが、これも1つのプロセスとしてのチャレンジであったかもしれません。
第7版では、さらに、プロジェクト毎にその形を変えてウオーターフォール型とアジャイル型を融合し、最適な独自の型を作っていくことでプロジェクトを成功させる。そのためのガイドブックであるとしています。
今後のプロジェクトマネジャ・スクラムマスターはどうすべきなのか?
現実のプロジェクトにおいては、ウオーターフォール型、アジャイル型でそれぞれに利点を感じて推進されているプロジェクトメンバーが多いと思います。
一方、それぞれの手法において、やはり上手く行かない部分があると感じて仕事をしている方がいると思います。そういった方には、第7版は理解し易いかもしれません。
しかし、第7版をガイドブックとしてプロジェクトを進めるというのは、恐らく、誰にとっても新しいチャレンジになると思います。
先ずは、プロセスを重視したプロジェクトマネジメント・柔軟性を重視したアジャイルの双方を学習・理解し、プロジェクト毎にどのようにそれらの利点を使用して行くのかを考える基礎を作り経験を積んでいくことが必要になると思います。
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